初景色

我の強めな感想を書きます

ミュージカル『王家の紋章』 感想

ミュージカル王家の紋章、ほんっとうに楽しかった~~~!!!ということで、帝劇で見た感想を、ちょっとばたばたして時間が経ってしまいましたが、博多座だとまた進化してたりするのかなと思いつつ、書いてみたいと思います。

私は普段たまにしか帝国劇場の方には来ないのですが、今回、わくくんが子役の頃ぶりに帝劇に出演されるとのことで、ひさしぶりに通うことになりました。応援し始めたのが7年ほど前なので、わくくんがアマデや子ルドをやってらした頃は観ておらず、いつかまた帝劇に立たれることもあるのかな?そのときはいっぱい観たいな、とふんわり思っていたのですが、なんとなくもう少し先な気持ちでいたので、びっくりしたしうれしかったです。
ダブルキャストを見比べたりするのもひさしぶりで、最初は好きになれるかしらどうかしらとちょっとどきどきしていたのですが、終わってみたら全員大好きになっちゃって、博多に住みたかった……となっております笑
ほんとに皆さんとっても素敵だったので、役ごとに好きなところを語らせてください。

メンフィス

浦井さんも海宝さんもとっても素敵で、観ていてほんとに楽しかったです!
メンフィス、どちらもイムホテップとの絡みがめちゃくちゃ好きでして……いやキャロルは?って感じなんですけど、イムホテップに対する笑顔に、メンフィスがどういう風に育ってきたかとか、素が見えるような気がして、一番ときめいちゃいました……。イムホテップがハグしようとするのが、王になる前のちっちゃい頃だったら跳びついてたりしたのかなと思ったり。両メンフィスとも一番安心できる相手なんだなって感じですっごく好きだったんです。

浦井さんメンフィスは、もうほんとに無邪気に笑うのがすっごくかわいくて……めちゃくちゃ歯見せて笑ってましたよね?あれずるい!!普段はファラオとして厳格に振る舞ってるし、佇まいにも威厳があって王らしいメンフィスですけれど、ほんとは無邪気でやんちゃな男の子なんだなぁと思ってました。ちっちゃい頃イムホテップに跳びついてそのまま肩まで登ってそう。キャロルに対しても等身大で素直に感情をぶつけていくイメージでした。あと、マント捌きがかっこいい!!!ひるがえる布が大好きすぎるので、毎回堪能しておりました。

海宝さんメンフィスは、真面目にファラオという立場と向き合って研鑽を重ねているような印象が強かったです。イムホテップに対しても、にっこにこのおじいちゃんって感じで寄ってくるのに対して、最初は抑制的に、大人っぽい笑顔で対応してて。でも、ふとしたときにちょっと歯見せて笑うのが、普段がんばって王として振る舞っているけれど、やわらかい部分もあるんだなというのが見える気がして好きでした。キャロルに対しても、王として心に鎧を纏って強く立っているけれど、キャロルにだけは心のやわらかい部分を見せてしまう、みたいな感じがして、ギャップがずるいなぁと思います。


キャロル

神田さんキャロルは真ん中に立つために生まれてきたような華があって、めちゃくちゃ好きです。まさしく少女漫画のヒロインって感じ。かわいくて、でも強くて自立している。生き抜いていくためのパワーと知恵がありそう。少女漫画とか少年漫画とかって、大人になって読むと、子どもがそんな過酷な運命を背負おうとしないで……と思ってしまうところがありますが(主人公が子どもだから当然ではあるんですけど)、「ナイルの娘」として民衆の愛と信仰を受け止めるなんて、ただの少女に背負わせるには重すぎるものを、このキャロルなら、悩みつつも、持ち前のパワーと魅力でプレッシャーを跳ね返して、ちゃんと自分の意思を貫いて行けそうで、本当に素敵で大好きでした。

木下さんキャロルは、いかにもお嬢様という感じのお淑やかさがありつつも、考古学に関してはオタク気質を発揮するところがめちゃくちゃ好きでした。興味のあることに出会うと目をきらーんとさせるのがとってもかわいい。私も小6~中2くらいのとき考古学者になりたい!って言っていたので、発見されたばかりの三内丸山遺跡に連れていってもらったときのこととかをちょっと思い出して、親近感を覚えます。イムホテップの連れてきた外国の方々のお話を聞きたそうなのもとってもかわいかったです。
ただ、真面目そうなので、王妃になることを決めるところでは、エジプトの人々の死を背負いすぎてしまわないか、心配になりました。「ナイルの娘」って声をかけられていくの、かなりしんどい。ただ守りたかっただけなんだとは思うのですが、こちらからすると、こんなかわいらしい少女に背負わせないで……という気持ちになってしまいました。海宝さんのメンフィスも真面目そうなので、真面目同士だと追い詰められちゃったりしない?大丈夫かな?みたいな気持ちに……。ちゃんと息抜きもしてね。でもまあその辺は、目を離すと興味あるところに出かけていっちゃいそうな気もしますが。かわいくて愛おしいです。

イズミル

平方さんイズミルは、なんかもう宝塚の2番手スターさんぽいキラキラ感がすごかったです。あの長い袖がとても似合ってらして、シルエット完璧だし、お歌もうまいしほんとかっこよかった~!イズミルの、女性を物としか思ってない感じがすごく出てる気がして、むかついたんですけど、悔しいけどかっこいい!!どうしてもときめいてしまうのでめちゃくちゃ悔しかったです!笑
威圧感がその長身からまっすぐ放たれていて、妖しい雰囲気のある役ですが、メンフィスと相対する堂々とした存在感があるのが素敵でした。これだけかっこよければ寄ってくる女性全員完落ち状態で駆け引きとかしたことないでしょって感じ。キャロルに対する感情、いちいち全部初めて知ったみたいな顔しててすごかったです。大変な初恋をしましたね……。

大貫さんイズミルは色気が下から這い寄ってくるようなイメージでした。もうほんと色気がすごくって、キャロルに近づいていくとき、本当に歌詞の通り、目の中に星空が映っているんじゃないかと思うくらい雰囲気があるのがとっても素敵でした。うつくしさと色気と、ちょっと得体の知れなさと。キャロルを鞭打った後は、もう完全に恋に落ちてましたね。なんとなく、すでに恋という感情を知ってるからこそ自分が恋をしている状態であることにちゃんと気づけているという感じがしました。言い寄ってくる女性たちと感情の駆け引きをしたことがある人な気がするんですよね、本気だったかどうかはともかく。キャロルに対する脅しは脅しであって本気ではなかったような気がするけどどうだろう。でも傷つける気なかったなら戦場に連れてくるのはやめなさい。
殺陣が本当にかっこよくって、あの長いお衣装と髪をいなしつつの激しい動き、そしてあのジャンプ。戦いをやめたとき、髪が乱れているのがまた、勇猛な戦士でもあるような感じがして、素敵でした。あと、カテコでくるっと回るのも、すごくかっこよくてちょっと悔しいです!


アイシス

アイシス様!!!好きです!!!!!
朝夏さんと新妻さん、お二人で好きの方向性が全然違うけど、どちらも好きすぎて、私もお側仕えしたかった……。初見ではなかなか弟への恋というものが受け入れがたく、現代の価値観に縛られている……と、自覚を得られたのも面白かったのですが、3回観劇した頃には完全に好きになってました。ミタムンの件に関しては、政治の問題を考えると賢いやり方では決してないと思うので、どうしてああいうやり方しかできなかったんだろうなぁと、特に公演期間の後半はすごく考えてました。

朝夏さんアイシス様はわりと姉としての気持ちも大きいのかなと思っていました。メンフィスのことをやわらかく愛で包み込むような印象で、だからこそ、ミタムンとのシーンは毎回ショックでした。なんとなく、「女王として、弟の妃として、弟と並び立ち国を治める人生」しか教えられてこなかった人なのではないかと感じました。「女王」では半分しか満たせてなくて、「弟の妃」であることによって人生が完成するような。アイシスとメンフィスの親がどういう人だったのかわからないけど、既に2人が即位していて、両親はあの場にいないってことは、もうご存命ではないのだろうと思いますし、もし母親の遺言でそういうこと言われてたりしたら地獄だなって勝手に思っちゃってました。普通は、恋が成就しないからって人生まで終わるわけじゃないけど、それを含めて一つの成すべき人生みたいになっちゃってたら、それがうまくいかなかったときに人生そのものが失敗みたいになっちゃうから、しんどいですよね。誰かこの人に「弟の妃」以外の道も示してくれたら良かったのになぁ、なんて思ってました。
彼女はちゃんと失恋できる人なんだなって印象が強くて。最後、もう叶わないと諦めて、悲しんでいるような印象を受けました。メンフィスのことをとても大事にしていて、大事な人のためになることだと思えばどんな苛烈なことも出来るし、身を引くことがメンフィスのためだと自分の中で納得できたら、自分の気持ちを抑えて身を引ける人なのかなと思っています。最終的にすごくいじらしくてかわいい人だなと感じました。すっぱり諦めをつけて次の人生で幸せを見つけてほしい……。
あと、メンフィスが「ファラオとして」かな?を歌うとき、ミタムンと一緒に後ろからメンフィスに熱い視線を送っているのが、宝塚力!って感じですっごく好きでした。目がハートになって肩が上がっちゃうくらい熱烈なミタムンと、落ち着いて見えるけれども誇らしげに熱く見つめるアイシス様と、それぞれの恋の違いも感じましたし、宝塚の、娘役さんの視線が男役さんを格好良く見せ、男役さんの視線が娘役さんを美しく見せる、みたいなのがすごく好きなので、お二人の視線でメンフィスがきらっきらに見えるのがとっても素敵で楽しかったです。

新妻さんアイシス様は、もう立場とかそういうの関係なくて、とにかく全身で恋してましたね。恋するのも憎むのも感情に身を捧げるような激しさで、本当に好きでした。見てて自分の若い頃を思い出してしまう……いや私は人を傷つけるような言動はしてない……してないはずですけど、恋するあまり人を殺したいほど憎む、あの感情の激しさは、個人的にはとてもなつかしくて、いとおしくすら思います。ただその衝動を形にしてしまってはいけないんですよね。私は恋という感情の暴力性をコントロールすることこそが愛だと思っているので、暴力をそのまま行使するのは私は愛とは呼ばないかな。まあ、アイシス様は暴力を行使できる立場の方なので、それをためらわなかっただけ、とも思えば、彼女にとっては当然のことでしかなかったのかもしれないとも感じるのですけれど。メンフィスに拒絶された後の、感情に体が引き裂かれてしまいそうなほどの絶唱。その身におさまらないほどの激情。恋というものは暴力的であればこそ唯一無二の美しい感情であるのだと思います。永遠に彼女の恋情に触れていたかった……。でも、時間が経てば落ち着くと思うな。渦中にいると苦しいですけどね、本気で向き合った感情は、いい思い出になることもあるんじゃないかなと思います。アイシス様の今後、原作は4巻までしか読めていないのでまだ知らないのですが、どうやら切ない感じっぽい?彼女なりの幸せが見つかるよう祈っています。


ライアン兄さん

ビジュアルを初めて見たとき、本当にあの頃の少女漫画からそのまま出てきたような感じで、びっくりしました。シルエットも、お顔立ちも、何もかも完璧すぎませんか?幕が開いてみたら、こんなにかわいそうだとは……。誰よりも守ってあげたくなるので、もしかしてヒロインはライアン兄さんなのでは?と思ってしまいました笑
幕開きのキャロルと電話してるときのでれっでれのお顔が本当にかわいくて大好きすぎて、永遠に見ていたかったです。「宣伝するよっ」で小首かしげるのがめちゃくちゃかわいいし、その次の台詞の最後さりげなくウィンクしてますよね?最初はしてなかった気もするんだけど見逃してただけかな?気づいたときしぬかと思いました。最初電話を取り次がれているときは仕事モードのお堅そうな雰囲気なのに、キャロルと話し始めると本当に幸せそうでかわいくてかわいくて、キャロル、古代行くのやめません?私はこのかわいさが永遠に守られていてほしいのですが……。
キャロルがいなくなってからは、日によってふらふら度合いが違うのも見ていて楽しい、と言うと語弊がありますが、ふらっふらだと、大丈夫?ごはん食べられてる?ってなりますし、がんばってると、気丈に振る舞って……という気持ちになりますね。キャロルが戻ってきてからは、また甘々な表情が見られて、本当に大事なんだなと感動してしまいますが、2回目にいなくなったのを気づいたときが一番かわいそうで、ほんとかわいそう……キャロル……黙っていなくならないで……かわいそうでかわいい。
ツイッターの方も、毎回、バリエーションがすごくて、楽しませていただいております。あれ、最後どうなるんだろう……劇中では永遠にライアン兄さんにハッピーエンドは来ないですが……かなしい。楽しみにしております。


ミタムン王女

まず、綺咲さんのイメージが、星組さんを何回か観に行ったときの、はちゃめちゃにかわいいお姫さま、というイメージだったので、ミタムン王女、あのお姫さまがこんな……なんて仕打ちを……ひどすぎる……と大変なショックを受けまして、もしかして、これがヒッタイト兵の気持ち……?と、謎にメタな観点から感情移入しておりました。
生きてるときはほんっとうにかわいくて、野心とプライドもありつつ、恋に恋する少女のような、ちょっとミーハーな感じがすごくかわいらしかったし、それがその後の悲劇性を際立たせるように感じていました。原作と違って失恋も知らずに未来を絶たれてしまうところに、無邪気な子どもが殺されてしまうような惨さを感じて、本当につらかったです。
そして、その後もずっと、復讐に捉われた存在として戦争の旗印にされているのが見ていてしんどくて。確かに復讐を望んだのは彼女自身だけれども、亡くなった瞬間だけが彼女の人生だったわけではないので、ちょっとミーハーで好奇心が強そうでかわいらしい彼女のことも、ちゃんと思い出して静かに悼んでもらえていたら良いなと思っていました。
だから、最後セチと目を合わせるのにほっとしていました。正直あそこの解釈は難しいなと思うんですけれど、エジプトに置き去りにされてしまった本来のかわいらしい彼女の心を、セチが見つけて道を示してあげたのかなという気がして、安心します。復讐心以外の彼女もヒッタイトに戻れていたらいいな。
というのは役の感想ですけれども、復讐する彼女のダンス自体は、鬼気迫る感じで、とても好きでした。照明も、ミタムンだけを赤く照らし出すのすっごくかっこよかったです!宝塚の娘役さんだと、あそこまでの振り切ったマイナス感情を表現されることってなかなかないような気がするので(伯爵令嬢のアンナは印象的でしたが)、また素敵な一面を見られた気がしてうれしかったです。
あと、わくくんとのお化けポーズのツーショがかわいすぎました……ありがとうございます……。もうね、ほんと、あのお姫さまと!っていう気持ちが強くて、一人でめちゃくちゃテンションが上がっておりました。


ナフテラ

本当にお声がおうつくしい。ナイルの娘、まさしく清い流れのような歌声で、まるで讃美歌のようでもあり、とても素敵でした。曲のうつくしさと場面の薄暗さもあいまって、歌というよりも、神秘的な音のする楽器のようだなと、聴き惚れておりました。
ずっとキャロルの味方という印象で、いてくださると安心しますね。キャロルのお衣装がどれも蓮をイメージされているのが、かわいいしこだわりを感じてとっても好きなのですが、その衣装もナフテラがこだわって用意したのかな、大事に思われてるのかな、なんて、ほっこりしておりました。


ルカ

岡宮さんルカ。前半で抜けていかれるのを本当に惜しい気持ちで見送りました。ビジュアルを初めて見たとき本当におきれいで、舞台でのお姿も少しかわいらしい雰囲気があるのに、歌声がとてもかっこよくていらして、ギャップにやられてしまいますね。ルカの歌、台詞と歌のつなぎが難しいと思うのですが、すごくなめらかで違和感がなくて、ずっとお歌を聴いてたいなと思ってました。歌声の印象と、イズミルに相対するときの目の力強さかな、なんとなく重心が低めに感じて、ヒッタイトからの間者というよりもイズミルの部下として忠義者なイメージが強かったです。

前山さんルカは、とにかくお美しくて、しなやかで、切れ者という印象でした。間者としての能力が高そうで、いろんなところで暗躍してそうだなと思いました。イズミルと並ぶときも、なんとなく迫力が拮抗している感じがあって、頭脳でサポートして、いろいろ知恵を授けていそうな雰囲気だなと感じていました。

ルカはね、あのラストシーン、どんな気持ちであそこにいるんだろうと、内心を想像するのがちょっとこわくて、あんまり考えられていないのですが、ちょっとずつ原作の続きを読み進めて、もう一度考えてみたいなと思っています。


ウナス

前山さんウナス、ルカとは打って変わって、本当にかわいらしかったですね!!!美貌は変わらないのに、なんか目の大きさ変わってませんか?ルカは細い流し目のイメージだったのに、ウナスはきゅるんきゅるんでしたね……。どうなってるんだろう、あれ。それでいて頼れそうな雰囲気もあるのが素敵でした。

大隅さんウナスは子犬みたいなかわいらしさがあり……でも子犬みたいなのに、地下でキャロルをかばったりするとこはわりと力強くて、ギャップ……って思ってました(ギャップに弱いので)。テーベの街のときとってもかわいくて、大好きでした。一幕最後に、ミヌーエ将軍とウナスとセチと、3人、夕日の中を歩み去る光景が、かわいらしくて穏やかで、あそこで時が止まればいいのになと思ってしまいます。


イムホテップ様

メンフィスのところでも書いたのですが、帰還のときのメンフィスとの対面がとても好きです。メンフィスが大事でかわいくて仕方ないのと、ちょっといたずらっぽいお茶目さと、本当にかわいくて大好きでした!そして、そんなかわいらしいお方でありながら、お声の雰囲気が本当に「賢者」という感じで、とっても素敵でした。
最後、ヒッタイトとの戦の後に歌われる曲が、私はすごく好きで、厳かながらもあたたかい歌声にセチが送り出されるのも好きだし、メンフィスたちに対する深い愛情を感じさせるところも好きだし、なんだかいろいろな面で、一番共感しながら聴いている気がします。このお話、基本的には子どもたちのお話だと思っていますが、終幕前に、ひとつ、長く生きてきた大人からの視点から、子どもたちへの祈りが示されることに、ほっとするのかもしれません。


ミヌーエ将軍

私は原作は最初読んでいなくて、千秋楽より前に読むかどうか迷っていたのですが、ミヌーエ将軍のことを知りたくなって、途中でとりあえず4巻まで読みました。セチが鞭打たれてるときに、メンフィスの方を伺っていて、止める許可が出たらすぐに制止してくれるでしょう?あれがうれしくて、どうしてなの?優しい人なのかな?って思って読んだんですけど、優しい人だった!いや5巻以降でどうなってるかはまだ知らないんですけど、とりあえず優しい人なんだなと思いました。原作でアイシス様に告るところは、下心を見せるタイミングは今ではない!!と思うのですが、舞台ではそれもないし。ツイッターで検索してると、アイシス様に見惚れて仕事がおろそかになってるときがあるというのを見かけたのですが、そこは気づけなかったので……それ見ると少し印象変わるのかしら?
墓泥棒のシーンでアイシス様を背中にかばうところにすごくときめいてしまいまして、公演期間の終盤はわりとミヌーエ将軍を見ていることが多かったです。殺陣がパワー系っぽいのもめちゃくちゃかっこよくって、メンフィスがサソリに刺される前の、ヒッタイト兵との交戦のシーンで、柄の部分で殴ってるみたいなところにすごくテンションが上がっておりました。ヒッタイトで戦うところでは、ヒッタイト兵の剣を奪った後それで他の相手を刺すのがすっごくかっこよかった!
それから、メンフィスがサソリに倒れたとき、祈るように頭を抱いてらっしゃるときがあったと思うのですが、王として仕える相手だけれども、同時にとても大事な存在でもあるんだろうなと、普段は前面に出てこない関係性が表に表れているようで、好きでした。


セチ

さて、推しです。どう考えてもここまで、推し以外の部分で十分楽しみすぎていて、推しの出演作をこんなに楽しめるなんてすごく幸せだなと思うのですが、その上、このお役、期待していた以上にとても見せ場があって、本当にこんなに幸せでよいのだろうかと思っておりました。
あの、だって、まさか、主演の方が歌ってらっしゃる後ろで一人で踊るとは、ちょっと想像以上でした。もうほんとに幸せ……。そもそもこんなにダンスのある役って、今までそんなに多くはなかったと思うので、ちょっとしたところでダンスもがんばってらっしゃるのかしらと感じる部分はあったのですが、今回、一気にこれまでに増されてきた魅力を見せつけられた気がします。そして、ダンスにも、もともと持ってらっしゃるお芝居の表現力が乗っている気がして、やっぱりわくくんの表現がすごく好きだなと思いました。振付も、長い腕が映える振りが多くて、腕を大きくなめらかに動かすのも、力強く動かすのもすごく素敵でした。イズミルがキャロルを誘拐するときや戦いのシーンではリフトもあって、シーンとしては心が痛かったりもしますが、見ていてほんとに楽しいです。
また、セチという役、物語上の役割としても、古代エジプトという、現代とは価値観の違う世界への導入であったり、その死が、キャロルが古代エジプトで責任ある立場で生きていくことを決心するきっかけになるなど、大切な役割を担っているのかなと思うので、こんな大事なお役を任されて……と感無量でした。
そして、キャロルへの感情。台詞としては明言されないけれど、キャロルが古代に戻ってきて、妃にすると言われたときの表情の変化がすっごく好きでした。大げさなわけではないのに表情だけでこんなに伝わるなんてすごいなと思うし、本当に切なくて。自分の中に生まれた苦しい感情を静かに自覚して、静かに飲みこんで、「キャロルを守りたい」という純粋な感情だけをキャロルに贈るのがとても尊いなと思います。
メンフィスの歌の後ろで踊るシーンでは、まずメンフィスお二方の歌がとてもうつくしくて切なくて、そんな中で踊ってらっしゃる姿に、立場や交わした言葉は違っても、同じように愛しく、大切で、守りたいのだなと感じました。剥き出しの感情を、全て叩きつけるかのように踊っていて、こんなにも激しい感情が内にあるのに、キャロルに直接ぶつけることはないのが、切なくて、でもそういう道を選ぶことは、少なくとも私には難しいなと思うので、すごくかっこいいなとも思います。奥の方で踊られるところでは、照明もとてもきれいで、砂漠の夜空の星々に照らされているかのように幻想的だなと、見惚れておりました。
この作品で、私が一番しんどかったのは、キャロルが奪われたことがわかって「戦争だ!」と歌うシーンでした。もうね、メタなんですけど、毎回新鮮に傷つくんですよね、誰よりも守られていてほしい人の口から「戦争」って言葉が出ることに。現実でそんなことが起こらないように、ちゃんと考えて生きていかなきゃいけないなって思いますし、そういう風に感じさせてくださることがとてもありがたいことだなと思っています。
出征のシーンで、アイシスとキャロルの声が重なる「どうか大切な人のもとへこの祈りよ届け、どうか災いを避けて」、この歌詞に本当に共感していました。異なる時代、異なる価値観の元で育った性格も全然違う2人の声が重なるということに、この感情の普遍性が表されているようでとても好きです。この2人は恋する相手に向けてですが、ナフテラやセフォラも同じように思っているでしょうし、ミヌーエ将軍やウナスがメンフィスに向ける気持ちにも、少し形は違うかもしれませんが、同じようなところもあるんじゃないかと思います。この作品は、少女漫画らしい強引な愛情表現が魅力でもありますが、繊細に相手を思う心もそこかしこに見てとれるような気がして、そういうところもこの作品の好きなところの1つだなと思っておりました。
ただ、私は、セチの生き方自体はかわいそうだとは思わないんですよね。自分で選んで自分で決めた道を全うしたので、満足だったのではと思いますし、格好良い生き方だなと思っています。最後、奥に消えていくときの笑顔がうつくしくて、悲しいけれど、キャロルを守るという道を迷わず歩めてよかったねという気持ちになります。

今回めちゃくちゃ感想を検索してたんですけど、わくくんの魅力に新たに気づかれた方も多いみたいで、そんな方にはぜひ4月にやってらしたこちらの公演のDVDも見ていただきたいです!すごく希望のような、前に進んでいくための推進力をくれるようなお役でした。とってもかわいいお歌とダンスのシーンもあるのでぜひ!(突然の宣伝すみません)
32nd note 「無題-1[MONO]-」 DVD【★特典付き★】 - One on One - shop

そして、12月の公演は、主演ということで、とっても楽しみです。初演も拝見しておりまして、題材としては万人向きではないのかなとは思いますが、すごく考えさせられるという意味で、とても面白い作品だし、難しい役だと思うので、どのように表現されるのか楽しみにしております。
オフ・ブロードウェイ ミュージカル 「キッド・ヴィクトリー」 | 浅草九倶楽部/浅草九劇


セフォラ

本当に優しくてあったかい雰囲気で素敵なお母さんでした。私、わくくんは「母さん」という台詞が世界一似合うと思ってるので、いっぱい聞けてうれしかったです。息子力が高い……。
セチに関して、かわいそうとは思わないと言いましたが、セフォラとの別れのシーンは、2人の間にやさしくやわらかい空気が流れているような気がして、それが余計に切なくなります。そして、セチが去って行った後、残されるセフォラが心配でしばらく直視できずにいたのですが、公演期間の終盤になって、やっと目をそらさずに見てみたら、ああそうか、セチが守りたかったのはキャロルの笑顔だものね、と納得しました。正直、あの流れで祝福の場にいることって、つらいと思いますし、笑顔でいらっしゃるのも見ていて痛々しい気持ちがありますが、悲しみと喜ばしさが共存しているように感じられて、息子が命をかけて守りたかったものが守られているということに、一筋の希望を見出していくのかな、そうであってほしいと思っています。

 

その他の方々も、皆さんとても素敵で、特に原作を読んでからは、この方はあのキャラクターだったりするのかしらと、考えてみるのも楽しかったです。ナイルの川の表現はとてもうつくしくて大好きでしたし、華やかなダンスも見ていてすごく楽しくて興奮しました。戦いのシーンの剣舞もとってもかっこよくて、音楽も最高でテンション上がって、全部の瞬間が楽しい作品でした。
衣装もとても素敵で、特に女性陣の髪飾りやアクセサリーが本当に好きで、それだけでも楽しかったです。カーテンコールのメンフィスとキャロルの金色のマント、なんとも豪華で、カテコのためだけに!?景気がいい!!!と最高にテンションが上がりました。まずマントが大好きなので……布はあればあるほど良いものです。あと、アイシス様の赤いお衣装の袖の、ひだの作られ方がとても素敵で……布の重なりによる濃淡と陰影が美しかったですね。お衣装展とかやってほしいなぁ。近くで見てみたい。
セットのヒエログリフも、意味はわからないけどすごくかわいかったし、開演前と休憩中の幕と照明で作られたナイル川の湖面のような表現も美しくて大好きでした。

 

本当にとっても楽しくて、幸せな時間でした。博多座の千秋楽まであと少し、関係者の方々の大変なご尽力でここまで至られているのだと思います。どうか最後まで、この素敵なカンパニーが守られますようにと、お祈りしております。